■建墓の時期
一周忌までは墓を建てないほうがよい――というようなことをよく聞くことがあります。そういわれる根拠にはいろいろな意味がふくまれておりますが、第一は経済的な問題からです。
父や母が、あるいは夫や妻が亡くなると、特に父や夫である場合は、その方たちが一家を支えてきた大黒柱だったわけですから、たちまちあとに残された者は経済的な問題をかかえることになります。死者の霊のために墓を造ることは大切なことではありますが、父や夫が亡くなってさまざまな問題をかかえている、充分な検討の余裕もない時期に、強いて建てなくてもよいというということなのです。これが母や妻であった時は、経済的な意味では問題は少ない場合が多いのですが、それでも、葬儀や法事のためのものいりにはかなりの費用を使うでしょう。したがって、供養する気持ちを一義において、一年を過ぎれば環境も気持ちも次第に整理されるから、それからでよいという意味の教訓なのです。
地方によっては、墓を建てると、親戚縁者総勢何十人にも集まってもらい、引出物まで用意をする所も多いので、なおのこと時間をおくことが必要になってきます。
第二は従来からのしきたりを守る、つという保守的な意味あいからです。父や母や年輩者の話を聞いて、忠実にそれを行うことが間違いのないことだとされる考え方です。葬儀や埋葬に関することは、特にそういう昔からの言い伝えを守ることが無難とされる点が多いのです。
第三は、昔は土葬が多かったために、地中に埋められた棺がくさり、屍が骨こなるまでには時間がかかったので、当然それに合わせて墓を建てることになったわけです。さらに27山い習慣ですと、両墓制をとっていた地方もあるぐらいです。つまリ屍を葬る場所と供養碑を建てる場所が別々なのです。屍は風葬や鳥葬が多く、骨になるには時間がかかりますし、そういう葬法ですと、誰れ言うとなくさまざまな忌みごとが語られ、墓を建てるまでに期間ができるわけです。
以上三つのことは、それぞれ単独で問題になることよりも、多くの場合重複して「一周忌までは――」といわれる原因になっています。